数理メモ


このページについて
 
 このページは、物理数学について理解に苦しんだ所、特に考えた事などをの個人的メモです。

 もしおかしいところがあったら指摘してくれると助かりますが、教科書的なものではなく、あまり厳密なところを述べたものではないので、少々の気になる表現には目をつむっていただきたいと思います。教科書に書きこむような内容として、参考にしていただけたら幸いです。

 なお、数式は分数表示や累乗表示などがとても見にくいため、各自で書き直しながら読む事をお奨めします。


grad, div, rot, ∇, △
  
 この演算子は、理工系の人は電磁気学で初めてお目にかかるのだと思います。お目にかかったは良いけど、なかなかこの公式について直感を得るのは困難で、結局は公式を丸暗記しただけで何もわかっていないまま、テストなんかでど忘れして困った(;´д`)なんてことになるわけです。

 grad
  
 grad は「グラディエント (gradient) 」と読み、日本語で「勾配」という意味を持ちます。これは直感するに困ることはないと思うのですが、一応確認しておくと、まずこの演算子は任意の3次元スカラ関数F(x,y,z)に対し、

grad F(x,y,z) = i∂F/∂x + j∂F/∂y + k∂F/∂z

という操作をします。ここで i j k は、それぞれ x, y, z軸方向の単位ベクトルとします。つまり、F を ある地点(x,y,z)での標高だとすると、grad は

「その地点での x, y, z方向のそれぞれの坂の急さ

を表している事になります。電磁気学では、

grad V = E

という式が出てきます。V が

「ある地点での電位、つまり基準電位からの標高(ポテンシャル)」

を表していて、電場 E は、

「それぞれの方向への V の変化率、つまり電位勾配

を表していることは、理解に難くはないと思います。

 div
  
 div は「ダイバージェンス (divergence) 」と読み、これは「発散」という意味です。演算の操作としては、

div D = i *∂D/∂x + j *∂D/∂y + k *∂D/∂z

   = ∂Dx/∂x + ∂Dy/∂y + ∂Dz/∂z


というものです。見て分かる通り、div も grad も演算操作の形は変わらないのですが、

 ・grad は引数がスカラ戻り値がベクトル

 ・div は引数がベクトル戻り値がスカラ(単位ベクトルとの内積)

である事に注意して下さい。そして「ガウスの法則」は、電束密度をD、電荷密度をρとすると、

div D = ρ

と書かれます。これは微分表示といわれるものです。

∂Dx/∂x は、

「電束密度の x 成分が微小区間 dx でどれだけ変化したか

を表わします。すなわち div D は、

微小区間 dx,dy,dz での電束密度の変化

ということになるのは良いでしょう。そこで、下図を見てください。

div.jpg

 ちょっとでかく作りすぎてしまいましたが、ある空間に電場が存在していて、図のような電束線で表されるとします。そこに、仮想的に微小な直方体凅凉凛 を考え、この内部の分布電荷密度をρとして体積積分すると、

∫ρdV = ρ凅凉凛

と近似されます。すると、上の「ガウスの法則」によって、

∫div D dV = div D 凅凉凛

   = (∂Dx/∂x + ∂Dy/∂y + ∂Dz/∂z)凅凉凛


と書けます。ここでちょっと数学的なテクニックを使いますが、図とよくにらめっこしてると分かってくると思います。

(∂Dy/∂y)凅凉凛 = {(∂Dy/∂y)凉}凅凛

と考えると、偏微分の定義から

(∂Dy/∂y)凉 = Dy(x, y +凉, z) - Dy(x, y, z)

となり、これはまさに、

微小区間凉 での電束密度の y 成分の変化

ですね。すると {(∂Dy/∂y)凉}凅凛 は、

「図の左側と右側の、微小面積凅凛 を通過する電束の y 成分の

と言えます。これはまた、面の法線を直方体外部に向かう方向に取ると、

凅凛 面の法線とそれを貫く電束の内積の和

といえます。
 すなわち∫div D dV は、

微小直方体凅凉凛 内から発する(またはそこに収束する)電束の数

ということができ、それは、

∫div D dV =(直方体の表面を通過する電束と法線の内積の総和)=∫Dn dS

となり、「ガウスの定理」が書けました。

 入ってくる電束より出てくる電束の方が多ければ、当然そこに湧き出しをさせている何かがあるわけで、それが、その空間の電荷密度ρに比例する量であると「ガウスの法則」は云っています。すなわち、

 ・電荷がないと(ρ = 0)、電束の湧き出しはないdiv D = 0)。

 ・正電荷からは(ρ>0発散div D >0)、負電荷では (ρ<0収束div D <0)。

 また、

∫ρdV = Q

とすれば、

∫div D dV = Q

ともかけ、

Qクーロンから発する電束はQ本

と言う事になります。

 rot
  
 rot は「ローテーション (rotation) 」と読み、これは「回転」と言う意味です。演算の中身は、

rot E = i(∂Ez/∂y - ∂Ey/∂z)
   + j(∂Ex/∂z - ∂Ez/∂x)
   + k(∂Ey/∂x - ∂Ex/∂y)


です。何か複雑に見えますが、文字の交代性周期性に注意すれば簡単です。

 さて、前の話は、

∫Dn ds = ∫div D dV = ∫ρdV = Q

となり、

ある微小直方体凅凉凛を考えて、この表面を貫く電束ベクトルの総和が、その直方体からの電束の発散・収束する数に等しく、その数はその直方体内の電荷に等しい

という話でした。

 この法則によって、電荷による電場を、電荷から出る電束線によって表現しようとした時の決まりが得られました。つまり、

Qクーロンからは電束線がQ本出ると約束する。

・途中で勝手に発生したり消えたりしない

 しかし、実際に電束線を描く場合には、もう一つ決まりが必要です。それは、

「電荷と電荷の間で、電束線はどのような経路をたどるのか」。

簡単に言うと、

途中で曲がったり渦巻いたりしないのか」

です。それを決めるのが、保存場の性質

rot E = 0

なのです。

 この場合も同様に、微小区間凅凉凛 を考え、電場のある経路に沿った周回線積分をしたとき

微小区間凅凉凛のまわりの周回積分)

   =Edl

   =(xy, yz, zx それぞれの面での周回積分の和)


   = (∂Ez/∂y - ∂Ey/∂z)凉凛 + (∂Ex/∂z - ∂Ez/∂x)凛凅 + (∂Ey/∂Ex - ∂Ex/∂y)凅凉

   =摘 dl≡∫(rot E)n dS

として、

rot E = (∂Ez/∂y - ∂Ey/∂z)i + (∂Ex/∂z - ∂Ez/∂x)j + (∂Ey/∂Ex - ∂Ex/∂y)k

と対応させた物でした。これは、「ストークスの定理」と言われています。

 周回積分の意味は、次の図を描いてみると分かります。

rot4.jpg

 1、電場がある一方向に向いていて、大きさも均等な場合。

 2、電場が渦を巻いている場合(すなわち、電気力線が閉曲線になっている場合。

 1の場合は、1周すると周回積分の変位ベクトルと電場ベクトルの内積の和がすべて打ち消しあって 0 になりますが、2の場合は周回積分の方向が常に電場とほぼ平行になるので、正か負の値になってしまいますね。つまり、何処かで勝手に曲がってたりしたら rot の値も正か負になってしまいますが、保存場ではつねに一定方向でその強さも均一なので、rot は必ず 0 になるのだということです。

 ここで、rot 自体の意味合いをより明確にするために、流体の場合を考えます。下図を見てください。

rot1.jpg

 これは、ある流れの中に中央を固定した物体をおいて、その物体の回転を観察したものです。円の左右の縦の矢印は、そこでの流速を表します。

 a の状態では、左右の流れが全く逆であるので、物体は矢印の方向へ回転します。

 b の場合は、片方に流れがあって反対側には流れがない状態ですが、その時も矢印の方向に回転する事は確認できると思います。

 そして c ですが、これは左の流速よりも右の流速の方が早い場合です。そして、やはりこれも図の矢印方向に回転することはこの類推で想像できるでしょうか。つまり、物体の左右での流れの相対速度が、その物体の回転の角運動量を生み出していると言う事で、ということは、この部分である意味渦が発生していると考える事ができます。

 これを踏まえた上で、下図を見てください。

rot2.jpg

 これは、ある流れの中に座標軸をとって、(x, y, 0)付近でのさっき述べた渦の様子を調べたものです。A をその地点での流量ベクトルとします。

 さて、左右の相対速度の差がその回転速度に寄与するのですから、いま図の円形を反時計回りに回転させる寄与を正とすると、その寄与は、

 (A の y成分の、xと x + dxでの流量の差)
   - (A の x成分の、yと y + dyでの流量の差)
 = [Ay(x + dx) - Ay(x)]
   -[Ax(y + dy) - Ax(y)]

ですね。そして、(x, y)地点での回転を出すにはそれぞれの回転の径 dx, dyで割って、径が0の極限を取れば良いわけです。すなわち、

 [Ay(x + dx) - Ay(x)]/dx
   -[Ax(y + dy) - Ax(y)]/dy
 →∂Ay/∂x - ∂Ax/∂y

で、これが (rot A)zの正体です。

 ところで、k(∂Ay/∂x - ∂Ax/∂y) は、右手系座標でいうとzの正方向にベクトルが向いている事になりますが(すなわち右ねじの法則)、これはちょうど船のスクリューを思い浮かべてもらうと分かりやすいと思います。つまり、rot の値自体が渦を巻いている面の法線成分で、渦の向きとその度合いを、いわば推進力として表わしています。

 それでは、一体どういう時に電場が渦を巻いたりするのかという事ですが、それこそがマクスウェルの式

rot E = -∂B/∂t

であり、電場はその場所の磁場の時間的変化によって曲げられるというものなのです。その証拠に、金属中に磁界の変化を与えると、渦電流と言う現象が起こります。

 あるいはこう考えても良いかもしれません。ソレノイドの渦状の電流が磁力を発生させることを考えると、電場の回転によるいわば「トルク」が

rot E = -∂B/∂t

で表わされる磁場の変化になると言えるでしょう。
 さて、上の説明を流れの場と比較すると、振るまいとして全く同じであるということが云えると思います。これはどう云う事なのかというと、「電流」とはまさに「電荷の移動(流れ)」であるという定義でした。ですから、その「場」が従う法則と言うのも流れの場と同じであって不思議ではないんです。

 ∇,△
  
 ここはオマケみたいなもんですが、これはそれぞれ「ナプラ」「ラプラシアン」と呼ばれる演算子で、xi 成分の基底ベクトルを eiとすると、


という操作です。と言っても分かりにくいと思いますが、要するに上の3つの演算は n = 3 として、


となります。確かめてみてください。こうすることの利点は言わずもがなですが、


といったところでしょうか。見て分かるとおり、電場が与えられれば電荷の分布の様子が事細かに記述できることが、良く見て取れると思います。つまり、電場を図形的に考えることができるわけです。これは数学で言う可微分多様体の概念で、電磁場も多様体の一種です。

 それと、こういった微分演算子の重要な特徴は「線形である」ということですね。つまり、あたかもベクトルのように足したり掛けたりが気軽に出来るということなんです。まあこういった計算や表記の簡略化は、後でテンソルについても触れようと思いますが、線形代数学の仕事の成果であり、考えた人は確かに偉いと思います。